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私は「完全受注制(オーダーメイド)」でお仏像を彫ることにこだわっています。ただし、それは単にご注文をいただいてからお仏像を彫るという形式的なことではありません。
完全受注制とすることで、施主様の想いや祈りといったものをじっくりと聞かせていただき、施主様の想いが形となった「世界でただ一つ、施主様のためだけの仏様」を彫るお手伝いをさせていただきたいのです。
宗教美術品(アート作品)としてのお仏像、大量生産品や海外生産のお仏像もある中で、なぜ完全受注制にこだわるのか?完全受注制の長所、そして私自身の仏様や仏像彫刻についての想い、仕事をするうえで心がけていることなどお話しします。お読みいただければ幸いです。
完全受注制の長所
完全受注制による一番の長所は、施主様と佛師が一緒に二人三脚でお仏像をお迎えできる点にあると想います。施主様の御宗旨はもちろんの事、好みやライフスタイルに添ったお仏像をお迎えすることができます。
材質、寸法、台座光背のデザインから、お顔の表情に至るまで、施主様のこだわりや想いを聞かせていただくことがスタート地点です。
どのような想いでお仏像をお迎えされたいのか、どのようなお姿のお仏像をお迎えしたいのか、そんな施主様の想いをかたちにさせていただけるということが、大量生産や海外生産には真似の出来ない、完全受注生産の良さであり、私がこだわり、追求する仕事です。
「立花麟士」にとっての仏様
もともと母が信心深い人でしたので(「佛師への道のり」参照)、仏様や神様、仏教といったものは物心つく前からずっと身近なものとしてありました。私にとってそれらは私自身を形作る最も大きな要素であり、欠かす事の出来ないものだと感じており、また、その様な環境に生まれ育った事を心より感謝しております。
これはまだ内弟子時代の頃のことですが、ある時偶然、施主様が師匠の後ろ姿に向かって拝んでいるのを見たことがあります。
その時改めて、施主様は私たち佛師を通して「仏様を見ている」、「仏様を拝んでいる」ということに想い至ったのです。だからこそ佛師の姿勢として、ただ作るだけ、彫るだけ、というわけにはいかないと思うのです。
仏様を彫るということに真摯な気持ちで臨まなければいけませんし、仏像彫刻のイチ職人というだけではすまされない仕事だと思っています。そのため私自身、得度もしましたし、佛師として技術を磨くだけでなく、御神仏の為、御神仏の前で手を合わせる方々の為、私自身に出来る限りのことをさせていただこうと思っております。
私の役目は「仏様と施主様の橋渡し」
仏様をお迎えしようという人は、何かしらの大切な想いや理由があります。ご自身の守り本尊として、あるいは、大切な人を失ってその方のご供養のためにという方もいるでしょう。理由は人それぞれですが、皆さま、強い想いをお持ちです。
そういう方に対して、私も真正面からその想いを受け止めたいと思っています。その方の想いを私自身が受け止め、しっかりと咀嚼してからお仏像をお作りしたいのです。
そもそも、お仏像は私一人で作るものではありません。施主様と二人三脚でお迎えしていくものです。私の好みでこれがいいからこうしましょう、あぁしましょうとは進められないのです。
極端な話をいえば、お仏像、仏様をお迎えしようとする施主様にとって、佛師である私は媒介に過ぎません。仏様を迎えたいという施主様と、仏様との間に私という存在があるだけで、お二方の橋渡しをするのが私の仕事であり、私の役目だと思っています。
生まれてくるお仏像は全て違う
施主様の想いを形にしようとすると、毎回お迎えする仏像は、雰囲気もお姿も変わってきます。どれがいいということはなく、同じ仏様を彫るのであっても、同じ木材、同じ寸法で彫っても、施主様ごとに雰囲気、お姿が違ってくるのです。
それは私の意図したことではなく、施主さまの想いを汲んで、お迎えした結果、そういう姿・形になっていくからです。
バランス感覚を大事にする
佛師としての技術にはもちろん自信を持っています。しかし佛師の仕事には技術に負けないくらい大切な事があります。それは、施主様の想いをきちんと汲めるのか?どこまで汲むことができるのか?という事です。それが佛師として仏様をお迎えする上でとても大切な事だと私は思っております。
しかしながら、佛師という作家である以上、いいものを作りたいという欲もあります。制作欲というのかなんというかはわかりません。自分は橋渡しをする存在なのだからという気持ちがありながら、異なる気持ちが混在しているのは事実です。
それでもやはり最後には施主様を第一に考え、そのお仏像の前に立って拝まれる方のために仕事を進める。「立花麟士」は出さないけれども、「立花麟士」じゃなければだめだ、という仕事をしなければいけないと思っています。矛盾していますが、そのバランス感覚を大事にしていきたいです。
想いを第一にということで、インターネットを介して御縁をいただいた施主様も一度お会いし、お話をさせていただいてからお仏像をお迎えさせていただいています。
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